今回は、行政書士試験、憲法の独学での学習方法がテーマです。
近年の出題傾向の分析と私が実際に学習した経験と解説します。
Contents
行政書士試験の憲法は学習するべき科目
行政書士試験の憲法は必ず学習しましょう。
憲法は行政書士試験300点満点中28点を占めており、行政書士試験の中では、下記のとおり、行政法の112点、民法の76点に次いで、3番目に高い配点となっています。
<行政書士試験配点>
しかし、3番目に配点が高いといえど、行政法と民法と比較すると配点は高くありません。
ぶっちゃけ、行政法と民法を全問正解し更に一般知識で足切りを回避できる24点を得点できれば、合計212点と余裕で合格できますが、次に記載する3点から必ず学習することをお勧めします。
①憲法は取り組みやすい科目
憲法は他の科目と比較して取り組みやすい科目です。中学の頃の公民で日本国憲法を学んだことを覚えているでしょうか。国民主権・平和主義・基本的人権の尊重の憲法の三大原則や、自由権・社会権など人権、そして国会・裁判所・内閣の統治に関する部分も一通り学んでいます。高校でも現代社会で日本国憲法を学んでいます。出題されるレベルは違いますが学習経験がある分、行政書士試験の試験科目の中でスムーズに取り組むことができます。
②法律を学ぶ上で土台になる
憲法は日本の最高法規であり、すべての法律を学ぶための土台となります。行政書士試験の憲法では「条文」と「判例」の知識を学びながら学習を進めていきます。中学、高校で日本国憲法を学習する際は「判例」について気に留めたことは無いと思いますが、行政書士試験法律科目の学習は、条文と判例を併せて学習する必要があるということを学習を通して身につけることができます。そのため、行政書士試験の最も配点が高い「行政法」を学習するにあたっては、憲法の学習を終えてから行政法の学習を進めることをお勧めします。
③憲法は得点源となる科目
憲法は、たいていの人は中学・高校で学習経験や、条文の数も全部で103条と他の法令科目と比較すると学習範囲が狭いため、過去問の周回も多くこなすことができます。学習経験があり周回も容易である憲法は得点源となります。他の受験生が得点できる問題を得点できないのは試験を攻略する上では良い選択肢とは言えません。それなりに学習を周回し、得点源としましょう
出題分野によって優先順位をつけよう
憲法は必ず学習すべき科目ですが、周回するにしてもすべての分野に対して同じ回数周回するというのは得策ではありません。したがって、出題分野によっては省略等を検討しましょう。
例えば、憲法総論については、出題の頻度が高くありません。そういった場合と頻出の箇所の学習量がイコールなのは、効果的な試験対策とは言えないでしょう。
実際に私も本試験1ヵ月前からの総復習時には、頻出の箇所を中心に学習しました。
●憲法の頻出分野について
行政書士試験の憲法の出題を過去5年間文分析すると、次のようなことが分かります。
①人権と統治では人権の比重が大きい
行政書士試験の出題は人権と統治の分野が高いと言われますが、人権と統治の出題を比較すると人権の方が出題数が多いことが読み取れます。逆に憲法保証(※日本国憲法第9章、第10章)についてはほとんど出題が無いことから、人権>統治>その他の比重で学習を進めるのが良いでしょう。
憲法はどのように学習すれば良い
では、実際に憲法はどのように学習すればよいのか?
まずは、私が実際に学習した勉強方法及び試験結果の反省点をを踏まえて紹介します。
●私が実践した学習方法
①「合格革命 行政書士 肢別過去問集」を1ページ1分程度で解いていく。
私は基本的に過去問を解いてからテキストで補足していくといった学習方法を取りました。目標とする学習時間は1ページ1分、ページを開き左に問題文、右に解説があるので、問題を見てすぐに解説を読む形で問題と解説をセットで2分間で学習していきました。問題集の集会を重ねれば、1ページあたりの時間も徐々に減少していきます。
なお私自身、最初の1周目で理解はできておりません。「合格革命 行政書士 肢別過去問集」で一通り過去問を見て、頻出の部分を中心にテキストで知識を補います。頻出の判断基準は出題された回数が書いてあり、回数が多いところを頻出と判断して学習に取り組みました。
② 「テキスト」を用いて、「合格革命 行政書士 肢別過去問集」で解いてきた内容を学習する。
復習内容は取捨選択し、復習するための時間はあらかじめ決めておきましょう。私は進捗によって前後しましたが、1時間程度を目安にしました。法律科目は学習を進めていくうちに腑に落ちることが良くあります。分からないからと悩み、分かるまで学習しようとすると試験範囲を1周するのにかなりの時間を要します。なお使用した教材は「合格革命 行政書士 基本テキスト」です。「合格革命 行政書士 肢別過去問集」に対応したテキストだったため使用した形になります。
③ 「合格革命 行政書士 肢別過去問集」で進めた問題集のページはその日のうちに解き直す。
学んだことをその日のうちに復習します。早いうちに復習することのより記憶に定着させること仕事の後の学習は疲れで新規に問題集を進めるのは効率的でないと判断していたので問題集のページを解き直していました。その日のうちに解いており答えも覚えているのでたいてい解けます。そして解けることが嬉しくて長めに学習でき効果的であったと思っております。
※なお、2周目以降の学習は、②と③は理解度、出題実績に応じて適宜利用していった形になります。分からないから立ち止まることはしないように心がけていました。
④記述式問題集に掲載している多肢選択式問題を解く。
学習方法は単純に読み込むだけの学習方法です。※特に記述する等の動作は必要なく、読込む形式で解いていきました。1周目は全問解きましたが2周目以降は過去に本試験で出題された問題は飛ばし時間の短縮を心がけました。
過去の出題から同じ多肢選択式問題で同じ問題が使用された形跡がないため、戦略的には間違っていないと思われます。
⑤予想模試で出題された多肢選択式の問題は覚える。
この学習学習方法は資格の学校等の分析力に頼った学習方法になります。
なお、私は本試験までに市販の予想模試を10回分取り組み、憲法の多肢選択式問題については、かなりの回数を読み込みました。
憲法の独学学習提案~独学での学習経験と本試験の結果を踏まえた結果~
私は、本試験では、5肢択一式問題:5問中4問正解できましたが、多肢選択式問題は4つの設問のうち1つしか正解できませんでした。なお、市販の予想模試を10回取り組んだうち、8回目から10回目の採点したところ、5肢択一式問題:5問中4問から全問正解、多肢選択式問題についても4つの設問のうち、悪くても2つは正解していました。
以上のことを踏まえて、行政書士試験の憲法を独学で学習する場合は次のとおりです
①憲法の五肢択一式問題については「合格革命 行政書士 肢別過去問集」で対策可能
私が、行政書士試験の憲法で使用した教材は「合格革命 行政書士 基本テキスト」と「合格革命 行政書士 肢別過去問集」です。テキストについては、最初学習するときに使用して、2周目以降はほとんど使用しなかったです。そのため学習の中心は「合格革命 行政書士 肢別過去問集」で進める形になります。繰り返していくうちに憲法は得点できるようになっていきます。
②多肢選択式問題については五肢択一式問題が解ければ自然と解けるようになると聞くが・・・
「合格革命 行政書士 肢別過去問集」である程度得点できるようになれば、自然と多肢選択式問題についても得点できるようになってきます。
ただし、私の本試験の多肢選択式問題の成績は芳しくなく説得力に欠けます。得点できなかった原因を挙げるとすると、多肢選択式問題の学習不足と言えます。対策として判例集や多肢選択式の問題集を買い足して学習するのも一つの手ではありますが、参考書や問題集の数を増やすと周回の数が減少するので、もし私がもう一度独学で受験勉強するのであれば、問題集を購入し多肢選択式の問題のみを解いていきます
行政書士試験の憲法について出題傾向を詳しく調査しました
憲法の頻出を調べると、行政書士試験の憲法は、人権は判例からの出題が多く、統治は条文からの出題が多いと聞いたことがあると思います。本記事を最後まで読めば、何故「人権は判例からの出題が多く、統治は条文からの出題が多い」かについてを理解できます。
そもそも憲法とは
「憲法は日本国内で適用される最も強いルール」という周知の事実ですが、最も強いルールの根拠は憲法が自らを最も強いルールであるとして宣言していること「最高法規」という言葉がキーワードとなります。
第十章 最高法規
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
② 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ※日本国憲法 抜粋
「最高法規」とは言葉のとおり「法体系のなかで,最も強い形式的効力をもつ法のこと」で第九十八条の条文の中で、憲法に反する法律は無効と決めています。「憲法」>「法律」の強弱関係を明確に示している訳です。
そしてよく聞くのは、憲法は「国家権力から国民を守る」ということ。国家権力から守るの条文は他にもたくさんあります。
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。※日本国憲法 抜粋
前述の条文は「そんなことは当たり前のものと思われるでしょう。」ただしその「当たり前」は憲法によって保障されているわけです。ところで憲法は「国民を国家権力から守る」ものであるのに対し、法律は「国家権力が国民を縛るもの」とよく言われます。「守る」と「縛る」は相反する内容ですよね。そして先ほど、となります。先ほど「憲法に反する法律は無効」と決められているはずなのにどうして、国民を縛るような法律は存在するのでしょうか。
憲法は国家権力から国民を守るもの、法律は国民を縛るもの
なぜ、国民を縛る法律は存在し得るのかについては憲法でよく聞く「公共の福祉」を学ぶと良く分かります。公共の福祉とは、各個人が自分の人権を確保するために、相互に矛盾や衝突を起こした場合に調整するための原理のことです。
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
② 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
例えば、マスコミには報道の自由がありますが、事件の遺族や加害者の家族のプライバシーも守られるべき権利です。
他にも感染症などにより、入院を余儀なくされ自由を制限されますが、それは周りの人の健康的な生活を送るための権利を守るために制限されます。
このように無制限に憲法の権利が守られるわけではなく、他の人の権利を害さない程度に権利を制限され調整されるわけです。
そして、制限=縛るためのルール作りとして、法律が出てくるのです。つまり、一見憲法は「国民を国家権力から守る」ものであるのに対し、法律は「国家権力が国民を縛るもの」と真逆のことを言っている風に見えますが、根本的な部分には「国民の権利を守るため」存在しているのです。そして法律は国民の権利を守るための調整するために縛るルールが多いことから、法律は「国家権力が国民を縛るもの」と言われるのでしょう。
人権は判例からの出題が多い
人権の種類には「自由権」「社会権」「参政権」「受益権」などがあります。それではどうして行政書士試験の人権は判例からの出題が多いとされるのでしょうか。
それは、人権の条文が抽象的であるからです。例えば、憲法二十五条では、「文化的な最低限度の生活を送る権利を有する」とあることから具体的な権利として付与されているのか。例えば、二十五条を根拠に「最低限の生活費〇万円ください。」といったような主張が認められるかどうか。抽象的に書かれているからこそ憲法の条文の中に答えが無いので「具体的な権利としてあるのだろう?」や「最低限の生活費をください」といった主張も出てくるのです。
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
そこで、抽象的な部分を補助するのが法律や裁判の判例が当てはまります。例えば先ほどの憲法25条1項は「すべての国民が、健康で文化的な最低限度の生活を営みうるように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を付与したものではない」(最大半昭42.5.24)とあるように条文の抽象的な部分を判例で補っています。そのため出題についても、判例の知識を求める問題が必然的に多くなるのです。
統治は条文からの出題が多い。…が最近の出題傾向からは要注意
一方で統治については、条文からの出題が多いといわれています。なぜなら、統治については具体的に書かれているものが多く、そもそも判例の数が「人権」と比較して少ないのが理由となります。以下は統治の国会に関する条文になります。読んでみてのとおり、具体的に書かれていますよね。判例等で補足する必要もなく出題する側にしても、条文の知識を問うことが中心になるのは必然と言えるでしょう。
第五十二条 国会の常会は、毎年一回これを召集する。
第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
第五十四条 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
② 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
③ 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。
ただし、統治の条文で判例の出題がないかというと、「令和元年度」では2題「平成31年度」は1題と判例の知識を問う問題が出題されました。
覚えるべき判例が少ないだけで、今までの「統治=条文知識」という方程式には近年の傾向から注意が必要です
行政書士試験の憲法の学習はどういった出題がされるでしょうか。正確に出題範囲を捉え、最近の出題傾向を掴むことができれば、日頃の学習を効果的に行うことが出kるでしょうそこで、過去5年の行政書士試験の憲法の出題内容について調査しました。
ところで、憲法の分類はWikipediaによると「人権規定」、「統治規定」、「憲法保証」の3つに分類されるようです。
日本国憲法の本文は、11章103条からなる。大別して、人権規定、統治規定、憲法保障の三つからなる。
人権規定とは、国民の権利などを定めた規定であり、主に「第3章 国民の権利及び義務」にまとめられている。
統治規定とは、国家の統治組織などを定めた規定であり、「第1章 天皇」「第4章 国会」「第5章 内閣」「第6章 司法」「第7章 財政」「第8章 地方自治」など多岐にわたる。
憲法保障とは、憲法秩序の存続や安定を保つことであり、そのための規定や制度としては、憲法の最高法規性が宣言され(98条)、公務員に憲法尊重擁護義務が課され(99条)、憲法改正の要件を定めて硬性憲法とする(96条)ほか、司法審査制(81条)や権力分立制なども挙げられる。Wikipedia 日本国憲法 参照
過去の出題実績を「人権規定」(第3章)を「人権」、「統治規定」(第1章、第4章、第5章、第6章、第7章、第8章)を「統治」、「憲法保証」(第9章、第10章)を「憲法保証」として分析していきます。
行政書士試験:憲法の5肢択一式問題の分析
憲法の5肢択一式問題について分析してみます。
下の図は、過去5年分の「憲法」の問題を分類別の出題実績になります。
「人権」と「統治」の分野が出題の中心ですが、更に人権の方が統治よりも出題の比重が大きいことが分かりました。「人権」と「統治」の学習はどちらも大切ですが、さらに優先順位をつけるのであれば、「人権」>「統治」であることは過去の出題実績から判断できます。
判例の学習がより重要になっている
過去5年分の憲法を分析すると近年はより判例知識を求める問題が多くなっていることが分かりました。今までどおり人権は判例中心の出題、統治は条文中心の出題であるが、選択肢の1つとして条文の知識を求める出題がされているものもある。令和元年度の出題については問題文すべてに「判例に照らし」と統治の出題問題についても判例の知識を求める問題が出題されており、統治の出題は条文の知識と決めて学習にかかるのではなく、憲法で出題実績のある判例は網羅的に学習する必要があります。
多肢選択式の問題
過去10年分の憲法の多肢選択式問題について調べたところ、すべて判例の穴埋めという形式でした。そのため今後も憲法の多肢選択式問題も判例の文中の穴埋めの問題が出題されると推定できます。
ただし、平成22年度の出題は「清宮四郎「憲法I〔第3版〕」から出題され、判例からの出題ではなかったため、100%判例の出題と決めつけて掛かるのは危険です。
まとめ
ここまで、長く書いてきましたが、要点をまとめると次の通りとなります。
①憲法は必ず学習しよう
②学習の優先順位は人権>統治>その他
③憲法の学習の中心は「合格革命 行政書士 肢別過去問集」で得点できるようになる。
以上になります。6ヵ月の学習期間でそこそこ取れるようになっているので、学習方法としてはあながち間違っていないと思います。
良いとところはぜひ活用いただき、悪いところは反面教師としてご活用いただければ幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
憲法の学習の補助に!(テキストや動画等紹介)
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